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「先輩、瞑想でもしてるんすか」
隣から話しかけられ我に返る。横に目をやると、小柄な男性が私を見ており、その人物が出勤したばかりの後輩スタッフであることに気づき、「ああ、田村君」と軽く会釈する。
後輩である田村君は下世話なスクープを取り扱う類の週刊誌を立ち読みしながら、同じようにレジに佇んでいた。彼はいつもやることがなくのんべんだらりと立ち尽くす私が眠ってしまわないようにという配慮からか、定期的に話しかけてくれる。
「なんせ暇だから、やることが何もなくてぐだぐだ頭の中で迷走してた」
誰もいない店内を指さして、私は答える。
「それはとても滅入りそうな作業ですね」
予め書いてあった文章を読み上げるように田村君は言って、再び週刊誌に目を戻すと何か面白い記事でも見つけたのか一人でにやつき始めた。横目で覗き込むと、いかにも週刊誌らしい破廉恥な見出しが目に入り、そんなものを異性の隣で読める彼の神経を疑う。
こんなのも含めていつもと変わらない光景だった。
年頃の女子であるにもかかわらずレンタルビデオショップでの深夜バイトをなぜ選んだかは忘れたが、今ではすっかり客の少なさによる暇に飼いならされてしまった。
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