4)君が側にいる理由

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先輩はなんで、蓮さんが好きなんですか 田村君の言葉がずっと私を締めつけている。頭から離れない理由は、きっと私自身答えを出せないでいるからだ。蓮に惹かれていた時もあったかもしれない。だけど、今蓮のことを好きかと聞かれると正直なところなんとも答えられなかった。当たり前のように一緒にいるからか、好きとか嫌いとか、いつしか彼に対する感情について考えることがなくなってしまった。 彼の部屋には寄らず真っ直ぐ自室へ帰った私は、突然の要求に機嫌を損ねたわけではない。 怖かったからだ。今会ってしまったら、彼のことを何とも思っていない自分に気づいてしまいそうで。 深夜2時過ぎの夜闇の中帰ってきた私をいつものように自室は迎えてくれる。 いつも以上に疲労を感じているせいか、もう寝れればいいよななんて乱暴な思考に促されるままに、粗雑に靴を脱ぐとそのまま部屋の明かりもつけずにベッドに倒れこんだ。だが、鳴りだした着信が寝かしつけてはくれず、それを取って耳に寄せる。 「悠那、まだか」 なかなかやってこない私に腹を立てているのか、それとも心配しているのか、いつもと同じ調子の蓮の声からは察しがつかない。 「ごめん。行けないかも」 正確には、行かない、だ。 「何でだよ」 「何でって。こんな時間だし寝たいからだよ、少しはこっちの気持ち考えてよ」 分かりきっていることに理由を尋ねてくる彼への苛立ち、それに眠気と疲れが相まって、私の口調を刺々しくさせる。 蓮はそんな返答を予期しておらず面を食らったのか押し黙ってしまった。
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