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「はいよ。ウェルカムドリンク」
そう言って、隣に座った蓮が発泡酒の缶を手渡してくる。冷蔵庫から取り出してきたばかりなのか、淡く濡れたアルミの感触が冷んやりとしていた。
「ありがとう」
隣で蓮が同じものを飲み始めたのを確認し、私もそのまま彼に倣うように受け取った缶を開ける。発泡酒の口を開けたときの空気の抜ける音が雑音のない室内に小気味良く響いた。
お酒はあまり得意ではなかったが、口に含むとともに開けたての発泡酒の炭酸が暴れるように喉を刺激するこの痛快な一口目だけは嫌いになれない。
「この前のピアス、気に入ってくれた?」
蓮は飲みかけの缶を床に置き、投げかけた質問とともに顔をこちらに向ける。どこか神妙な面持ちで彼が切り出したのは、この前の記念日にくれたプレゼントの話だった。
「うん。よかったよ。私が好きだって言ってたブランド、覚えててくれたの嬉しかった」
そんなお礼の言葉を話しながらも、貰ったピアスを今日つけて来ないあたりが私の可愛くないところだろうな、なんて今になって後悔の念に駆られだす。
「なんでよ。覚えてないわけないじゃん。こう見えて意外と記憶力いいんだからな、俺」
蓮が照れくさそうに笑ってくれるのが幸いだった。
「来月は私から渡そうかな。貰ってばかりだよね、最近」
プレゼントの話をする中で、逆に私は蓮に何もあげてないことを気づかされて、急に不安になった。
伺うように送った視線を受け止めるかのように蓮は目を合わせてくれる。こんなに近くで同じ目線に座る彼が、なぜか懐かしく思えてしょうがなかった。きっと、いつも一緒にいるって、ただそれだけのことに満足して、彼の気持ちまで理解しようとしてなかったからだろう。
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