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「…はぁ~~。疲れた……。」
赤になった信号機を横目に、固まった体を背伸びして解した。徹夜明けで目がしばしばする。頭も痛い。
閉じようとする瞼を必死で開きながら、横断歩道の信号が青になったのを確認して、歩き出した。
家に帰ったらシャワーを浴びて、小腹を満たしたい。家には何かあっただろうか?…冷蔵庫は確か空っぽだったはずだ。仕方がない、コンビニにでも寄って買っていこう。
そんなことを考えながら、前に進む。この後に大変なことが起こるなんて微塵も思わずにいた自分を呪いたい。
前に進む。
前に_____
「____…な____いっ!」
後ろから聞こえた声。
「……?」
やけに焦燥を感じる声だったからか、少し気になって後ろを振り返った。
あの時止まらずに前に進んでいれば、助かったのだろうか?
いや、きっと助からなかったのだろう。俺はきっとそういう運命だった。…運命だのなんだのはガラじゃないが。
“ドンッ”
その直後に感じる振動。
「あれ?」
体が重力に逆らって飛ぶ気持ち悪い浮遊感。周りの人の悲鳴。車のブレーキ音。
体が地面に落ちる感触。誰かが駆け寄る姿。体から何かがすーっと抜けていくような感じ。
あぁ、死ぬんだ。
直感で悟った。
体が熱い。いや、もう熱くもない。何も感じない。目の前が真っ暗だ。耳鳴りが酷い。
「あぁ…ここで終わりか。」
きちんと声に出せていたかはわからない。
意外と長かったな。31年。
死に際までそんなくだらないことを考えながら、俺、白川大介の人生はここで終わった。
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