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『プロポーズ』
あまりに刺激が強すぎて、いきなりその言葉を出すのは危険だと思ってた。
だから、オブラートに包んだ表現をチョイスしたつもりだ。
でも、先に種明かしされちまうとは......ちょっとショックだ。
取り敢えずは、無難に返しとこう......
「そうだよ。まさかこんな所でプロポーズするとは思って無かったけどな」
取って付けたような返しだったけど、今の俺の精神状態だったら及第点なんじゃないか......
オーバーヒート寸前な心臓に、ごまかし笑顔と言う名の冷却水を注入する亮だった。
一方、恵理は、
「しかも雨だし・・」
夜空を覆い尽くす雨雲を見詰めながら、独り言のようにそう呟く。
ザー......
先程からポツポツ降り始めていた雨が、途端に激しくなり始める。結構な勢いだ。
頬を伝わる滴は、雨なのか?......
それとも涙なのか?......
心なしか恵理の二つの瞳は、赤味を帯びてるようにも見える。
そんな恵理の姿を背後から見詰める影は、未だ微動だに動かない。
影くん......
君も気が気じゃ無いんだろうな......
もし、君が恵理を連れて行こうとするなら、悪いが俺も一緒にお供させて貰うぜ。
ストーカーだろうが、何と呼ばれようが、俺はもう決めたんだ。恵理から二度と離れないって......
だから......この娘は諦めてくれ。
頼む......
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