心霊コンサル 佳奈月とまの事件簿

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 To  七縁奈々(ななぶちなな)  件名 旧館の呪いについて  はじめまして、心霊コンサルタント様。  神楽丘円満(かぐらおかえま)と申します。  神楽丘家にまつわる言い伝えの件で、ご相談させて頂きたくメールしました。  先週、父の重蔵が死去しました。  資産家である父の遺産分配にあたり、旧館の相続問題が勃発しました。  広大な敷地の山際に、荒れ果てた邸宅が一軒あります。  セメント製の二階建て。  上階の窓枠には頑丈な鉄格子がはまっています。  太平洋戦争末期に、先祖である高級将校が建築しました。  表向きは疎開の為、という事になっています。  実際は娘の奇矯な振舞いを、世間から隠す為の隔離施設でした。  将校と妻の間には、獣憑きとされる娘がいました。  大きな叫び声を上げたり突然暴れまわったりで、地元民から恐れられていました。  やむをえず夫妻は、家の二階に娘を閉じ込めたのです。  ある夜階上への鍵を掛け忘れたため、娘が一階へ降りてきました。  娘は鬱屈した狂気を爆発させます。  騒ぎを聞きつけた住民が見たものは、滅多刺しにされた夫妻の姿でした。  娘は山へ逃げ込んだ姿を最後に行方不明。  更に戦地から復員した息子のうち二人が、家の中で不可解な死を迎えます。  以来家は一族の者から、人喰い邸と称され忌み嫌われています。  呪いなど現代においては、馬鹿馬鹿しいと思われるかもしれませんね。  亡くなった父も、老齢ながら豪胆な人物でした。  死の前日には例の家を見ると息巻き、制止も空しく一人家へ向かいました。  そして夜遅く、家の前で倒れている所を執事に発見されました。  今では家を押し付け合い、兄弟間の仲が険悪になりつつあります。  なにとぞ対策をお願い致します。
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