実技試験

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クチル先生が僕に向かって言った。 皆が学校から帰ると、僕はクチル先生の部屋に行った。 「失礼します。」 見ると先生は何か書き物をしていた。 僕は静かに先生の机の前にある椅子に座った。 「アバン君来ましたか。 今日もまた君だけが試験に落ちた訳ですが、媒介を変えるつもりはないんですか?」 クチル先生は既に七十歳を過ぎたおじいさんであったが、今でも現役で頑張っていた。 「これは、父が僕に残してくれた形見です。 ですから、変える気はありません。」 指輪を擦りながら僕は言った。 「ふー、そうですか。 確か君のお父さんは、戦争に駆り出されて、その先で亡くなった。私はそう聞いています。」 「はい。」 「君のお父さんはそれほど目立つ人ではありませんでしたが、媒介の研究を熱心にされていたんですよね。」 「はい。」 「その媒介も君のお父さんが作られた物らしいが、君も13歳。 学部も上がり、これからは更に魔法の扱いも難しくなる。 どうだね?一度適正な媒介を自ら探しても良いと思うんだがね。」 「いえ、僕はこの指輪を使いたいんです。」 先生は、またため息をつき、「仕方がありませんね。普段はあまり自分を主張しない君が、いつもこの話にだけは聞く耳を持たない。     
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