1人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
クチル先生が僕に向かって言った。
皆が学校から帰ると、僕はクチル先生の部屋に行った。
「失礼します。」
見ると先生は何か書き物をしていた。
僕は静かに先生の机の前にある椅子に座った。
「アバン君来ましたか。
今日もまた君だけが試験に落ちた訳ですが、媒介を変えるつもりはないんですか?」
クチル先生は既に七十歳を過ぎたおじいさんであったが、今でも現役で頑張っていた。
「これは、父が僕に残してくれた形見です。
ですから、変える気はありません。」
指輪を擦りながら僕は言った。
「ふー、そうですか。
確か君のお父さんは、戦争に駆り出されて、その先で亡くなった。私はそう聞いています。」
「はい。」
「君のお父さんはそれほど目立つ人ではありませんでしたが、媒介の研究を熱心にされていたんですよね。」
「はい。」
「その媒介も君のお父さんが作られた物らしいが、君も13歳。
学部も上がり、これからは更に魔法の扱いも難しくなる。
どうだね?一度適正な媒介を自ら探しても良いと思うんだがね。」
「いえ、僕はこの指輪を使いたいんです。」
先生は、またため息をつき、「仕方がありませんね。普段はあまり自分を主張しない君が、いつもこの話にだけは聞く耳を持たない。
最初のコメントを投稿しよう!