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ですが、明日、再試験をしますが。もし駄目なようなら留年、もしくは最悪退学ってことも考えられますからね。」と言った。
僕は「はい」と返事をし、先生の部屋から出た。
家に帰る道中、とても気が重かった。
「はー、明日の再試験が駄目なら留年。最悪退学か。どうしよう。」
落ち込む僕に、右手の指輪から声が聞こえてくる。
「アバン、ごめんよ。僕に力がないばかりに。」
その声は指輪に秘められた力の元、ウサギのものだ。
「そんなことないよ。君の力を最大限に引き出せない僕の責任さ。」
僕の持つ指輪にはウサギが住んでいる。
ただ、住んでいるといっても、本物のウサギが居るわけではなく、精神とその身体能力が込められており、僕の魔法はそれを引き出し、自らを強化したり出来るのだ。
それを僕を上手く引き出すことが出来ないので、留年しそうと言うわけである。
「それにしても参ったな。帰って母さんになんて言えばいいいか分からないよ。」
父さんは戦争で帰らぬ人となり、僕は母さんと二人暮らしであった。
その母さんも、父さんが亡くなってすぐに体を壊し、ほとんどを家の中で過ごしている。
家に着くと、母さんは編み物をしており、僕に気づくと「おかえり。」と、優しく微笑んでくれた。
その顔を見て、僕は試験の結果を伝えることが出来ず、「ただいま。」とだけ言った。
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