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夕飯作りは、出来るだけぼくがやった。
体調があまり優れない母さんを、少しでも楽させてあげたいからである。
この日の夜はシチューにした。
グツグツと煮える鍋を混ぜながら、僕は明日の再試験へ向け、魔法の教科書を見て勉強をする。
「これがあーで、あれがこれだから。うーん。」
その姿を見て母さんが笑った。
「あなたを見ていると、お父さんを思い出すわ。
お父さんも、私が風邪を引いたりすると、僕が料理を作るからって、代わりに作ってくれたことがあったの。
でもね、お父さんったら、料理を作りながら研究のノートを見てるの。
それで、結局はノートを熱心に見るものだから、大体いつも、料理を失敗してたわ。」
母さんは、父さんの話をするとき、大抵笑って話した。
僕も父さんの記憶が無いわけではないが、僕が5才ぐらいの時に戦争へ駆り出されてしまったため、はっきりとは覚えていなかった。
「父さんは、魔法が上手だった?」
僕は素朴な質問をした。
「そうね、お世辞にもあまり上手だとは言えなかったわ。
魔法の構造などの論理的な知識はものすごかったけど、実践はあまり得意ではなかったわね。」
母さんの答えに、僕が実技を不得意とするのも、もしかしたら父さん譲りなのかもしれないと思ってしまった。
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