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託された想い
学校が終わり家に帰ると、いつものように母さんが編み物をしている。
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
僕は母さんの隣に座ると、今日の出来事を話した。
その中には、実技試験でのこともあった。
「あら、そうなの。
それは良かったわね。」
「有難う。
でも、心の底から喜べないよ。
周りの奴らは父さんを馬鹿にするんだから。」
「そうね。
私も大好きなお父さんの悪口を言われるのは嫌だわ。
でもね、だからといってその子達を恨んだり憎んだりしては駄目。
恨みは更なる恨みを、憎しみは更なる憎しみしか生み出さない。
戦争もそうやって段々大きくなった結果、父さんも出兵させられたの。
今は戦争も大分落ち着いたけれど、いつまた大きな戦争が起きるか分からない。
そうならないためにも、これからを担うあなた達若者が、気持ちを清らかに持ってもらわなければいけないの。
そうすれば、戦争なんて馬鹿げたことは起こらなくなるわ。」
体は弱くても、心は力強く優しく気高い母を僕はいつも誇りに思っていた。
そんな母の言葉が、僕を包み込み心が浄化される気分になる。
「うん。
分かった。
これからはその気持ちを心掛けるよ。」
僕は母を抱きしめると、自分の部屋に戻った。
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