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第1章 再会
仕事帰り、いつもの電車、いつもの帰り道、毎日が繰り返し。
見覚えのある顔が、電車の向かいの座席に座っている。
黒ぶち眼鏡に、黒髪でトレンド感のあるマッシュヘアの彼は、昔の面影を残しつつも、いかにも好青年といった様な印象の顔立ちに仕上がっていた。
高校を卒業し、それぞれ大学へ進学してからは会うこともなくなっていた。
社会人4年目となった今、高校で一度だけ同じクラスであったという、それ以上でもそれ以下でもない関係の自分のことを今、彼が認識してくれる可能性は極めて低い。
例え彼に送ったとしてもメールアドレスは既に変わっていて、おそらく送信した瞬間、自分の元へエラーとなって返ってくるであろうメールも今や、連絡手段としては主流ではなくなってしまった。
ふと、彼が顔をあげこちらに気がついた。
心臓の鼓動が高まっているのは気のせいではない。
目が合ったかと思うと、彼は一瞬、記憶を辿るように首をかしげ
「こ、ば、や、か、わ、?」
口パクでおそらくそう聞いた。
私は大きく頷くと、彼は満足そうな笑みを浮かべた。
10年も昔の記憶が瞬時に蘇り、懐かしくもはがゆい気分に陥る。
何を隠そう彼は、高校時代の私の片想いの相手なのだ。
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