真守と竜二

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 涙を誰か拭ってくれる ―― 抱きしめてくれる。 「もう、泣かなくていいから……」  その声は……お母さん?   じゃあ、今まであった事は全部ゆめ? 「マモ、1人にしてごめんな」  その声は、お父さん?  俺の傍に居てくれるの?  俺も2人を強く抱きしめた。  でも、待てよ ――?  なんか、ちょっと、違うような気がする……  俺は目を開けた。 「はよ~、寝坊助ちゃん」  至近距離にあのイケメンの顔があった! 「大丈夫か? 泣いてるぞ?」 「あ……」  俺は、もしや抱きついていないか?  そして……抱きしめられてないか?? 「もう大丈夫、俺がついてる」   並みの女なら即キュン死しそうな天使の微笑みで  俺の瞼にキスをして涙を吸い取った!!  瞬間、意識は完全覚醒! 「ちょっっ! 何してる??」  いつの間にか俺の上には毛布が掛けられていて  その中にイケメンもいる!  しかも上半身裸!   俺は……服を着ている。良かった…… 「仕事から帰ってシャワー浴びて戻っても  マモってば寝てて、めっちゃ可愛い寝顔見てたら  俺も眠くなってさ」  俺を見てテヘッと笑う。 「……顔、近くない?」 「あー、気にしない気にしない、マモの寝姿も  可愛いすぎ。しかも泣いてるし、顔真っ赤だよ」  俺は慌てて涙を拭いて、イケメンへ背を向けた。 「……お父さんって言ってたけど、  やっぱまだ寂しい?」  背後からイケメンが聞いてきた。  心臓が痛いくらい鼓動を速める。 「こ、この間死んだうちの番犬。子供の頃からずっと  可愛がってたから、夢にまで出てきちゃたのかなぁ、  アハハハ ――」     咄嗟に理解不能な上にわざとらしいでまかせを  かました。 「ふぅぅぅん、ワンちゃんなんだぁ。変わった名前  つけてたんだな……」  明らかに嘘だとばれてる……当然か。  イケメンが先に毛布から出る。 「シャワー浴びな、出かけるぞ」  言いながら片隅のらせん階段で階上へ登って行った。  既にカーテンが引かれた窓に目を向ければ、  外はすっぽり夕闇が降りている様子だ。
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