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「へぇ~……」
マジマジと隣を見ていきなりある事を思い出し、
声を上げそうになって、自分の口を両手で覆った。
(嘘、だろ ―― まさか、な……)
「何だ。何か言いたそうだな」
ククッと喉の奥を鳴らして笑う。
愉悦に揺れる顔まで綺麗で目眩がしてくる。
「……もしかして、祠堂学院の卒業生だったり
します?」
「まぁな」
「じゃあ……」
「ま、実際には中等部の1年1学期から停学食らって、
そのまま留学したからあそこにはほとんど通って
ないんだけど。未だ学籍は残ってるらしい」
生徒会の”幹部三役”のうち会計監査役員を
幼なじみの国枝 あつしがやってるので、
以前1度卒業式の準備を手伝った時、生徒会室に
飾ってあった歴代生徒会会長の写真で唯一”後ろ姿”
だけしか写ってないものがあって。
不思議に思いあつしに聞いてみたら、
アレが祠堂の伝説ともなってる先々代会長の物
だと教えられ凄くびっくりした。
「写真、嫌いなのか?」
(あのとき感じた疑問をそのまま言葉にし、
ついタメ口を聞いてしまい、慌てて言い直す)
「――じゃなくて、嫌いなんですか?」
「身内だけの時はタメ口でいいよ」
砕けた口調の竜二とは対照的に、
車内の空気はだんだん凍りついてゆく。
「でも……」
「写真、な。俺、一応”手嶌組”の跡目候補だから、
今は必要以上に自分の顔、晒しちゃいけねぇんだ。
だから、うちの組でも会でも俺はもとよりおふくろや
兄弟達の顔を知ってるのは幹部のごく僅かしかいない」
「そっか……」
(見かけによらず結構苦労してるんだな)
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