再出発

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  「ね、会社は?」 「休み」 「サボりの間違いじゃない?」  ギロッと睨まれ目を逸らす。    と、その時、玄関でドアチャイムが鳴った。     「手嶌さん」 「……」  あれ? 聞こえなかった?  もう1回呼んでみる ――     「手嶌さん?」 「……」  故意に無視(シカト)されてる、みたい。    でも、俺、シカトされるような事やったか?    自問して、ハッとした ――    『―― 俺の事は竜二って呼び捨てでいい』    ちょっと待て。もしかして……    たったそれだけの事で拗ねてるのか?     こいつは子供かよ。    半ば呆れ、そんなとこも可愛いとか思いつつ  今度はお望み通りの呼び捨てで声をかけた。     「りゅーじ」 「なんだ」  アハっ ―― ウケる……     「玄関に誰か来たみたい」       と、言ってる傍からまた ――    ピンポ~ン     「放っておけ」 「いいの? 会社の人かも」 「俺1人いなくたって会社は動く」 「そりゃそうかも知れないけど……」  ピンポ~ン ピンポ~ン ピンポ~ン    来訪者が立ち去る気配は全くない。     「ねぇ、俺が出て来ようか?」 「……チッ」  今にも相手を殺しそうな形相で渋々身体を離す。    それなのに、立ち上がったところで玄関の扉が  開いた音がした。
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