再出発

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「もうっ。時継さんったら、いきなりそれじゃ、  びっくりするでしょ、男が嫁って。あのね  真守くん、僕、男だけと嫁なの。戸籍上は  ”神楽”の息子だけど。だから安心してね。  あ、そうそう、それに、元気になったらうちにも  遊びに来て? でっかいわんこもいるから」  なんて優しい顔をして話しかけてくれるんだろう、  と安堵した。  涙を溢れさせる俺の頬を竜二がハンカチで  優しく拭ってくれた。 「姐さん、申し訳ありません。ご迷惑をおかけします」 「気にしないで。僕ね、こうゆう事は持ち回りだと  思ってるんだ。僕も時継さんに助けられて初めて人の  本当の温かさを感じる事が出来たから、真守くん  にもそうなって欲しいって思うし」  笑いながら真琴さんが言った。 「竜二、今日はこのままマモちゃんについててやれ。  後でデリバリーが届くから、ゆっくり飯でも  食うて話を聞いてやれ、曰くありやろからな」  ありがとうございます、と頭を下げる竜二。  ”それじゃまたね” と、神楽さんと真琴さん、  それに国枝の小母さん達も帰って行った。  見送りに行ってくると竜二が後を追い部屋を出た。  なぜ、ごく最近会ったばかりの俺に、  皆んなこんなにも親切にしてくれるんだろう?  はっきり言って、どこの馬の骨ともわからない  こんな俺に。    あんな人達は見たことがない。    涙が止まらなかった。  薬のせいだろうか、そのまま俺は眠っていた。
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