再出発

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 夜は竜二と一緒に、神楽さんが頼んでいてくれた  超豪華な松花堂弁当を食べた。  ごちそうさまでした、と食事を終えた俺に  自ら煎茶を淹れてくれ、竜二は缶ビールを飲み  ながら話しを切り出した。 「―― いい機会だからお前の事をもっと知りたい」  このマンションで初めて目覚め、竜二と会った時は  だんまりを通してしまったけど。  こんなにも親身になって自分を心配してくれる  竜二には全てありのままを打ち明けなければいけない  と、思った。  竜二ほどの男なら俺の身辺調査など造作もない事  だったろうに……  俺が気持ちを固めるまで待ってくれたのが、  凄く嬉しかった。     「……まずは、家族の事だ。俺と生活し始めて1週間に  なるってのに、警察へ捜索願いすら出てない。放任  主義にしたってちと度が過ぎてやしないか?」   「両親は2人共自殺した。竜二と出逢うまで、俺は  母方の叔母家族と暮らしてたんだ」   「じゃあ……体の疵もそいつらの仕業か?」  せっかくさっきバスルームで顔洗ってきたのに、  今までの押し殺してきた感情が溢れて、  涙が止められない。   「小母さんは言った ―― まったく、  姉さん達もお前なんか拾わなきゃ  余計な借金作る事もなかったのに ――って」   「?! お、お前……」 「成瀬の父と母も、俺の本当の両親じゃなかったんだ  ……でも、2人は俺を心から大事に思って、  愛してくれた ―― 自分は何て言われたっていい、  でも、父さんや母さんを悪く言われるのは、  どうしても我慢出来なかった……叔母さんや  叔父さんに口汚くなじられる度、悔しくて  堪らなかった」    「……」
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