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足音とともに移動すること十五分
ひとつの扉を見据えた。
コン、コン。
軽快な音が重い空気を連れてくる
「入れ」
「失礼します」
執務室であるこの部屋に足を踏み入れた、向こう側の窓には父の背と私の金髪を映している。
「私の婚約の件で日程の書類が届きましたので持って来ました。」
そうか。
その一言だけで目線を合わせることはない、この人はこういう人間だ。
秘書の人に書類を手渡す
用は終わった……
ならば長居は無用だろう。
「では、失礼しました」
背を向けず後退り扉に手を掛ける
「待て」
父の声が聞こえた。
「婚約者は王女だ、わかっているだろうが……」
暗に王宮とのコネが出来るように上手く付き合え、と言っているのだろう。
「はい、気を付けます」
そう言いながら扉を閉めた。
自然と下を向いたみたいだ、私はなんて脆弱なのだろう……
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