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平日の夜に、走り始めた。会社から帰った後、家の近所のあまり車の通らない道を選んで、三十分だけ走る。
週二回は必ず走ると決めて、一か月続けてから英司に言うと、よく眠れるようになったかと聞かれた。
-かえって目が冴えて眠れなかったりする
-そういうこともあるな。
-明け方、夢みるのは少なくなった気がする
-うん、それいいね。走るって精神的にも良い薬になるよ。
走ることに時間とエネルギーを注ぐと、体はきつくても気持ちが楽になった。その間は、暗い内側を忘れていられる。
一人で走っている時に、「死ぬまで生きる練習」という言葉が時々頭をよぎるようになった。
長い間、セックスを「精神的にも良い薬」のように使ってきた。僕の性的な妄想は、子供の頃から、男の人の腕に抱かれている自分で、受け身で男と寝ている間は、心が軽くなった。ただ、自分も相手も目的を果たして、空っぽになった後の虚しい気持ちは年々募って、だんだん耐え難くなった。英司と別れて何人かと寝た後で、相手を探すことはやめてしまった。
一か月続いたからあと一か月、もう一か月、と自分を励まして、走ることを習慣にした。
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