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夢を憶えていることは少なくなった。でも、夜のランニングを週三回に増やした直後に、あのカフェの夢をみた。
駅から歩いて、辿り着いた円筒形のビルの二階は美容室だった。洋服屋じゃなかったっけ、と思いながら、一階のカフェに入った。
プラスチック製の色とりどりのテーブルと椅子がある。席につき、前にこの店に来た時、誰かに会ったことを思い出した。
誰だったか。嬉しかったのに悲しかったのは、何故だったか。
あのケーキ、佐倉さんと分けて食べたんだ!
ああ、今さらそんなことを思いつくのか?
想像にすぎないのに、僕はそれを確信するというのか?
寝てないって?
それでも、彼女が羨ましかった。
あそこには、芝田がいた。本当にあったことだろうか。
僕は誰が来るのを待っているのだろう。
芝田を睨んだ後で、僕を見たあの目を、いつ忘れるのだろう。
キシさん。(今は会いたくない。会うのは怖い。)
僕がここで会ったのはキシだ。でも、彼がケーキを運んでいたのは、別のカフェ。
このテーブルに小さな箱をおいた時、キシは嬉しそうだった。僕の夢の中だったから。
カフェの席に一人で座っている僕は、今もあの箱を開けたいと願っていた。
その切望に体が震え、胸が痛んで涙が溢れてくる。
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