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あの箱には、キシが僕を特別に思っていたという証拠が入っていたかもしれないから。その全てが夢だとしても、だ。 ゆっくり目を開けると、まぶたの裏に溜まっていた涙が両頬に流れ落ち、耳を伝って枕に染み込んだ。カーテンの向こうはもう明るくなっている。 ケーキか。考えたことすらなかった。 芝田といたカフェで偶然会った時に、キシのトレイの上にあったやつだ。どんなケーキだったかも覚えていない。 で、あの女が羨ましかったって?気は確かか? 僕は笑おうとして、しゃくりあげた。天井を向いて涙が溢れるままにしていると、首筋が濡れてひんやりとした。 キシのことは、普段の生活では思い出さない。 それなのに、夢が扉を開けると、あの時の傷はまだ僕を泣かせるほど痛い。
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