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新築祝いに田中邸を訪れた鈴木は驚きの声を上げた。招き入れられた家の中に、家が建っていたからだ。
「これはどういう事だ!? 家の中に家があるぞ!? 欠陥住宅というやつか!?」
鈴木の言葉に、田中は笑って答えた。
「おいおい、滅多なことは言わないでくれ。これは勿論、欠陥住宅なんかではないし、君を驚かせようとした訳でもない。僕の住む家の為に、家を建てたのさ」
「ますます訳がわからない」
困惑する鈴木に、田中は説明する。
「君がそう思うのも無理はない。つまり、せっかく建てた新築の家が、雨風で汚れていくのを我慢出来なかった僕は、家の為に家を建てる事にしたんだ。家用の家ってやつだ。人間だって家に暮らすんだ、それと同じで、家用の家があったっておかしくはないだろ?」
「…ううん、私には正直よくわからないが、色々な価値観があるのだな」
「まあ、そういう事だ。…ところで最近、家用の家に愛着が湧いたので、そろそろ家用の家の為の家を建てようと思うのだが…」
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