踏切の女

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鉄道会社を担当していた保険会社の同僚のOは、駅員が自炊をする駅舎で、いつも、ランチをご馳走になっていました。その中に無口なイケメンのYさんがいました。知らずに見惚れていたせいか、年配の駅員Aさんが、あいつ、イケメンだろうとOを牽制するために、ある話を聞かせてくれました。YさんがN駅にいた頃、Yさんに一目惚れをした若い女性がいたそうです。女性は徐々にストーカーになり仕事にも支障をきたすようになったYさんは警察にも通報し、別離が決定的となった日に女性はN駅の踏切で飛び込み自殺をしたそうです。Yさんはショックからしばらく休職をしていたそうです。Oは営業先から戻るとN駅の踏切だって~怖い、二度と行けないと大騒ぎでした。でも、一番怖かったのは私です。その時、点と点がつながる怖い体験をしたのですから、、、 話を聞く数年前。私はまだ大学生でした。地方出身のMと東京出身のHは私の一番の友達でした。Mは真面目な性格で、将来、英語を使って仕事をしたいと大学に通う傍ら、専門学校にも通っていました。当時、失恋も重なり、英語の勉強をしたいのに英語を勉強しようとすると吐き気に襲われるという不思議な症状に見舞われた彼女はやがて専門学校に通えなくなり、爪を灯すようにして貯めた授業料も返還してもらえないとわかった日に、自らの手首を切りました。 実は今、実家から通っているのという、打ち明け話から、一連の出来事を聞かされたのです。 Mは言いました。死ぬつもりは全くなかったの。ただ「そうしなきゃ許されないような気がして」手首を薄く切り、自ら119番をしたのです。住んでいた学生寮はすぐに追い出されたそうです。 彼女を心配したのは私とHだけでなく、東京在住のHの母は一人暮らしのMを心配し彼女が慕う占い師に会わせてくれました。その占い師は所謂みえる人で以前住んでいた部屋をみてあげるとのこと。学生寮の最寄りはN駅でした。Mはあの踏切を毎日渡っていたのです。占い師は目を閉じ、ああ嫌だ。ああ怖い。ダメ、ダメよ。そう言って震えたそうです。あなたの部屋、5階の奥ね。失恋して踏切で死んだ女があなたの部屋に入るのが見える。恐らく、失恋したあなたを同じ目に合わせたかった。だからMは死ぬつもりはないのに「そうしなければ許されないような気がして」手首を切ったのだ。 今でも列車がN駅に近づくと踏切だけは絶対見ないようにしている。
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