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封印解除
高等部の構造は、少し複雑だった。
校舎は幾度も増築・改築を行い、中は複雑な構造になっており、新入生ややって来たばかりの教師達は必ず迷う。
なので生徒手帳には地図が入っており、皆地図を頼りに校舎の中を歩く。
校舎を中心に、北から劇や集会が行われる講堂があり右手側にはプール、校庭、噴水池があるガーデニングに、そして昔は寮、今は廃墟の建物があった。
榊は講堂。
依琉はプール。
神無月は校庭。
雛はガーデニング。
九曜は廃墟。
五人はそれぞれ持ち場にたどり着き、腕時計で時刻を確認した。
もうすぐ八時になる。
彼等は持ち場の、ある物の前に立っていた。
それは十字架。
木製の十字架の前に、五人は真剣な表情で立っている。
「……やはり朽ちている。年々、朽ち方が酷くなっているな」
榊は低い声で呟き、ため息をついた。
コレが光輪学院の『封印』だった。
高等部は他の幼等部から大学院の校舎に囲まれる形で建てられた。
それはこの学院の創立者が、一つの『未来』を知っていたからこその、この建て方だった。
「……ボクとは違い、『未来』を<視>る力、か」
依琉は細い声で言った。
創立者が自分達と同じく、特殊能力の持ち主であったことを、学院長から聞いていた。
その人は『未来』を<視>る力を持っていた。
「だからこその『封話部』か……」
神無月は諦めたように肩を竦めた。
創立者は一つの『未来』を知った。
この土地が、力を持っていることを。
そしてここにつくられた建物には、異様な力が集まってしまうことを。
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