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榊は部長らしく怒るも、神無月の顔には苦味がでていた。
「……普通の部活動なら、サボることすら考えませんよ。普通じゃないからイヤなんです! 特に今日!」
ビシッと榊と依琉を指差し、神無月は涙目になった。
「今日は休もうかと思いましたよ! 去年の恐怖がまだっ……!」
そこまで言って、神無月は口を閉じた。
恐怖が体を固まらせているからだ。
そこへ、ドタドタと足音がこちらへ近付いてくる。
その音は部室の前で止まり、勢い良く扉が開いた。
「遅れゴメンなさぁ~い! くぅちゃん、連れてきたわよ」
外国の人形と間違うほどの美しい容姿を持つ雛が、片手に九曜の腕を掴んだまま現れた。
九曜は渋い顔で引きづられている。
「……離してくださいよ。雛先輩。もう逃げられませんから」
逃げられない、つまりは一度は逃げようとしたのか。
神無月は思わず、両手を合わせた。
そんな神無月の姿を見つけた九曜は、雛の腕を振りきり、神無月の元へ駆け寄った。
「神無月先輩はどちらに?」
「依琉の方よ。……ったく、明日からまた友達が減るわ」
「同感。オレは遠巻きにされます。何せ雛先輩でしたから」
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