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そうだ、こいつにスプレーしたらどうだろう?
棚からスプレーを持ってきて、さっきの効果を見たくてテレビに向かって噴射してみた。すると辺りはラベンダーの香りがしたが、テレビに映る容疑者に何の変化もなかった。
「えぇ~? 何で何も起きないんだ?」
説明書をまた読み返す。
「あ!」
「そうか、この映像は昼間の映像で、要は再放送だからだ。現在の映像ではない。過ぎた時間に対して噴射しても意味がないんだ」
ーーもったいないことをした。
使い方を理解した僕は残り3回の噴射については使い時を緻密に考えることにした。
このスプレーは5回分しかないこともあり小さなスプレーだから持ち運びには便利。ポケットに携帯出来る大きさだ。毎日ポケットに常備しておけば、何か良くないことがあったときに使えばそれが瞬間的に変わるだろう。しかしそんな都合よく¨良くない場面¨に遭遇することはない。
それから数日経ち、社長の知人が経営している居酒屋を貸し切りにして、会社恒例の忘年会が行われた。
総勢20名前後のさほど大きくもない会社だが、人情味ある年配者から今風の若手まで幅広い年齢層がいる。時間も過ぎていくとアルコールもあいまって、若手がタメ口で話すようになっていた。
「仕事は若手に任せていかないとダメッスよ。コピーばかりさせたって若いやつが成長出来るわけないじゃないんだよ。そうでしょ!」
言葉を荒げながら周囲に同意を求める。
おいおい、アルコールに飲まれて理性なくすなよ、若者。黙ってる上司の顔が不気味だぞ。
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