デビュー

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デビュー

「先生、先生。」 誰かに体を揺らされるその人は、ペンを持ったまま机に突っ伏していた。 「先生、いいかげん起きてくださいって。」 「うーん、今何時ですか。」 その人は、ボサボサの髪を掻き鳴らし、体を起こした。 「もう、朝の十時ですよ。あれだけ、今日は大切な日だって言っておいたじゃないですか。」 「あー、そうでしたかね。」 「いや、あーそうでしたかね。じゃないですよ。 いいから、早く身支度整えて下さい。」 面倒くさそうに立ち上がったその人がこの話の主人公。 高校一年生にして、プロの作家デビューを果たした男子。 名前を鈴原亮(すずはらりょう)。 彼は今日、作家デビューを決めた本、『僕はキミのために死ねる』の初サイン会であった。 世の女性方は、本に出てくる主人公「北川一馬(きたがわかずま)」にメロメロであった。 一馬はモテモテの男子高校生でいつも周りの人気者、そんな一馬はある日、同じ高校に通う女子生徒、三村杏(みむらあんず)に出会う。 杏は周りと違い、いつも一人で静かに本を読んでいる子であった。 一馬は次第に、自分に無い何かを持っている杏に心惹かれていく。     
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