あなたには僕の言葉が届いてますか

偶然の産物

サイン会の翌日は、亮の高校生活初日を迎える日であった。

まだ真新しい制服に袖を通し、高校に行く準備をする。

まだ都会の暮らしになれていないため、昨日は寝る前に高校へ行く道を携帯で調べておいた。

｢さて行くか。｣

この日の天気は晴天。

春の暖かい風が体をすり抜けていく。

近くのバス停までは歩いて五分ほど、バスで十五分ほど走ると最寄り駅に着く。

そこから電車で二十分ほど乗り、また少し歩くと亮が通う東栄高校(とうえいこうこう)に着く。

特に道を間違えることなく、なんとか無事に着いた。

校門近くに咲く桜が、ヒラヒラと花びらを落とし、亮の頭に落ちた。

うーんと伸びをすると、高校生活への第一歩を踏み入れた。

周りには自分と同じまだ初々しい姿の生徒もいれば、本当に高校生なのか分からない、やたらと大人びた生徒もいた。

亮は色んな生徒の間をすり抜け、教室に行く前に職員室に向かった。

昨日入学式に出席出来なかったので、先に担任の先生に挨拶するためだ。

ガラガラ。

職員室に入ると何人かの先生がこちらを見た。

そのうちの一人、まだ若そうな女性の先生がこちらに軽く手を振っている。

亮はその先生の近くに歩み寄ると、軽く会釈した。