一年一組

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亮はこの時、自分の自己紹介をするより、あの女の子が何か自分のことを適当に話すんではないかと思い、心臓の鼓動が一気に早くなるのを感じた。 「はい、じゃー今日は皆出席してるわね。 これがこの一年間を共にするクラスメートなので、少しずつでもお互いのことを知って、より良いクラスにしていきましょう。 よろしくね。」 その言葉を期に皆一斉に「よろしくお願いします。」と言う。 そして、亮と光は前に来るように言われた。 「では、先程言ったように、昨日自己紹介をしてもらえていない、鈴原亮さんと、田辺光さんに自己紹介をしてもらいます。 まずは、鈴原さんお願い。」 亮は横に並ぶ光をチラっと見た。 光はニコニコとクラスメートに笑顔を振りまいている。 そんな光に不安を抱きながら、亮は一歩前に出た。 「鈴原亮です。 田舎からこちらに出てきたばかりなので、あまりここら辺のことは分かりませんが、皆に色々と教えてもらえればと思います。 よろしくお願いします。」 無難とはこのことだと言うぐらい、余計なことを言わず、とにかく手短に紹介をすませた。 一人暮らしだの、本が好きだのと、何かしら作家の仕事に結び付きそうなフレーズは言わずにいた。 もし、これから作家と言うことがバレたとしても、それは致し方ない、けれど一分一秒でもそれに抗いたい亮であった。 紹介を終え一歩後ろに下がる。     
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