一年一組

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亮は静まり返る図書室を一回りしてみる。 見回ると、読んだことのある本も何冊かあった。 念のため亮は自分の本がないか見てみたが、見当たらなかった。 もし、自分の本があるようなら年中貸し出ししてやろうと思っていたが、今のところその心配はなく安心した。 よさげな本を二冊みつくろい、図書カードを作ると借りて図書室を出た。 もうさすがに下駄箱には光るはいないと思いながらも、恐る恐る足を運ぶ。 下駄箱に近づき見ると、誰もいなく、自分の靴に履き替えると、自宅に向け帰った。 行きと同じ道のりで帰る道中は、これからの三年間のことを考えるのに亮にとってはいい時間であった。 しかし、考えていると少し憂うつになった。 自分が作家になる切っ掛けを作り、作家になった後もこちらで頑張ることを決意したはずが、今日起きた出来事は心を挫かせるのに十分であった。 一年一組にとって、これからどんな存在として歩んでいけばいいのか、答えが見つからない亮は、作家デビューという華々しい人生とは裏腹に、高校生活には不安だけが残った。
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