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それが意外にもコンテストで評価され、作家デビューに至った。
そのデビューに際しての初サイン会である今日、実は高校の入学式でもあった。
本当は日にちをズラしてもらう予定であったが、どうしても入学式の日しかサイン会会場である書店との日程が会わず、入学式は欠席するしかなかった。
それは高校側も了解してくれ、亮の両親も承諾してくれた。
サイン会に向け、出版社から「サインを練習しておいて下さい。」と言われ、練習していたが、亮は気づけば寝ていてしまっていたのだ。
そして、今、亮を起こしに来ているのが担当の佐々木である。
「あのー、佐々木さん。今日って何時からサイン会でしたっけ。」
亮は着なれないスーツに袖を通しながら聞いた。
「十二時ですよ。十時には出ますよって昨日あれだけ念を押して言ったのに、念には念をで家に直接来てよかった。」
佐々木は忙しそうにスケジュール帳をみたり、何か原稿なようなものに目を通している。
「いや、まだこっちの生活になれてなくて、時差ボケってやつですか。」
亮は田舎に住んでいたが、作家デビューをきっかけに、出版社との打ち合わせも多いだろうからと、都会のアパートに一人暮らしを始めた。
高校もそのことがあり、急遽都会の高校に行くことにしたのだ。
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