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「何が時差ボケですか。同じ日本の中から引っ越してきたんですから、そんなものありませんよ。」
佐々木は三十歳のアラサーで、自分よりもかなり年下の若者の考え、特に亮の言動にはいつもまいっていた。
「とにかく、急いで行けばまだ間に合いますから。
私、外でタクシー呼んでおくので、用意できたら来てくださいね。」
慌ただしく佐々木は部屋から出ていった。
そんな佐々木に乱されることなく、亮はマイペースに準備をした。
正直サイン会は自分がしたくてするわけではなかったので、気乗りはしていなかった。
ただ、プロの作家になるということは、こういうのが付き物であることは知っていたので、仕方なく行くだけのことであった。
なんとか準備も終わり、アパートの下に行くと、既にタクシーは停まっており、佐々木が腕時計をトントン指で叩きながら待っていた。
「はい、乗って乗って」と、強引にタクシーの奥に詰め込まれ、タクシーは会場まで軽快に走った。
次々と流れる都会の風景を眺めながら、亮は佐々木の話を聞いた。
「今日のサイン会は先着100名です。
腕が疲れようが最後までやってもらいますからね。」
「はい、分かってますよ。」
佐々木の熱が亮には暑苦しすぎた。
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