12.そして、出会い

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   他を寄せ付ける気が無いのがありありと分かる。  言葉は荒くはない。むしろ丁寧だ。逆らわないしすぐに動く。身を守るということをしない、間違えればみんなの手を止めてでも間違いの修正に手を尽くす。 (働くってことなら申し分ないんだろうな)  不思議でしょうがない、どうしてこんな人間になったんだろう。けれど自分が考えてもしょうがないと思う。  それはジェロームの歓迎会で起きた。 『仲良くなるって仕事に必要な事ですか?』 『失うことが分かってる仲間意識とか友情とか』  人を突き刺すというより、自分を突き刺しているように聞こえた。 「俺、最初っからこいつ気に食わなかったんだ  ママんとこに帰りな!」  突然のジェロームへの哲平の糾弾。哲平を突き飛ばしたことにも驚いた。そうは見えなかった、激情家には。そしてさらに見えたものは痛いほどの苦痛と悲しみだった。 「ここでも虐めですか」 「構わないですよ」 「慣れてますから」  淡々とした言葉に息が詰まる。見えない溢れる涙を感じた。そして課長がジェロームのことを話した。 『彼に家族はいない。みんな亡くなったんだ』  聞いた途端にゾッとした。『空っぽのホテル』を思い出す。  あの時。父も母も消えてもう誰もいないのだと思ったあの怯え。倒れた時に真理恵が来なかったら、自分はどうなっていてもおかしくなかったのだ。  だが真理恵がいた。朗が来てくれた。師範と出会い、マスターと出会い。そして父も母も帰ってきた。  なのにジェロームには帰ってきてくれる人も出迎えてくれる人もいない。 (それは……俺には耐えられない……)     
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