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小学校はそれでも良かった。変人は変人でもそれなりに『いいトコのお坊っちゃま』という前置きが付いたから。ケンカはしても大きく発展することは無い。
それにみんなは花の勢いに気圧されていた。口でも頭でも勝てないから心がコテンパンにされる。だから傷を負うほどの喧嘩の相手はたかが知れていた。
中学校入学。
「花、今度ばかりは行くからね。スーツもちゃんと用意したし」
「私もよ。何を言ってもだめ」
確かに今回ばかりはどうしようもないと思った。さすがに入学式に来るなとは言いにくい。
「分かった。ありがとう、わざわざ明日の入学式のためにルーマニアから戻ってくれて。でもさ、どうせならもっと早い時間が良かったな。今、もう11時半だよ。俺がいい子だったらとっくに寝てる時間」
「ごめん。個展の打ち合わせで時間がかかったんだよ。責めるならダディを責めておくれ」
「じゃ、ダディ。この瀬戸際でバタバタするのは良くなかったと思うよ。もっと早く連絡を入れること。入学式に出たいってもっと早く言ってほしかった、俺にも心の準備が要るから。だから反省して」
「花、反省する。許してくれるかい?」
「んんー。無事に入学式が終わったら、許すかどうか検討するよ」
「じゃ、明日の午後評価をしておくれ。立派に大人しく参列するよ」
少しは安心したが、何か忘れている気がした。自分の部屋に戻りかけて、くるりとターンする。
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