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「ダディ、マム。明日着る予定の服を見せて」
「え……」
「え、じゃないでしょ、マム。ほら、出して見せて」
「あのね、うんと質素にしたのよ。本当よ、花が怒るようなこと、するつもり無いから」
「なら見せてよ。チェックするまで寝ないからね」
父も母も恐る恐るトランクから服を出した。
「作ったんだ。明日のために」
「私もよ。別々に作ったから乱れたリズムになっているけれど、それは許して欲しいの」
腕組みをしている花の前で二人とも服を広げた。
「ダディ、却下」
「なぜ!」
「マム、却下」
「そんな!」
悲痛な顔をする二人は泣かんばかりに手もみして息子に訴える。
「さっきも言ったけれど一緒に揃えなかったからいけなかったのね。ごめんなさい。でも今はこれしか……」
「そういう問題じゃないんだよ。ダディ、普通のお父さんはこんな……あずき色っていうの?」
「日本語で言えばエンジ色だよ」
「そういう色は着ないんだよ。マム、白いって言うのはいいんだけどね、こんなに胸と背中が開いちゃダメ。ダンスパーティーじゃないんだから」
「でも!」
「いいよ、一緒にクローゼットに行ってみよう。来ちゃダメって言わないから俺がこれっていうのを着てよ。いいね?」
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