疑惑の検査入院

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平日の昼過ぎ、いつもなら会社で働いているはずの時間。僕はバスに揺られながら、手元の書類とにらめっこしている。その書類はこの前健康診断を受けた病院からのもので、検査入院の案内状……。 僕こと山根陽太は高卒社会人で、今年で27歳になった。社会人になって、もうすぐ10年。 飲酒喫煙は一切せず、平日は会社と自宅の間を、朝晩10分は歩いている。 休日だって小一時間ほど身体を動かしているし、食べるものだって野菜がメインだ。 何が言いたいのかというと、検査入院の必要性が分からないということ。 身体に異変だってないし、メタボ体型ってこともない。 強いて言えば、156センチという低身長くらいだけど、これは病気でもなんでもない。 それでも、心当たりはあった。 健康診断をしに来てくれた先生の中に、女医さんがいた。確か、茅野さんっていったっけ……。 心電図の担当をしていて、ワイシャツを脱いだ僕の上半身をまじまじと見て、舌なめずりをしていた。 茅野さんはすごく美人だったけど、性格がキツそうな顔立ちをしていた。スラリと背が高くて、スタイル抜群。 ムチムチした巨乳と太ももに、男性社員のほとんどは鼻の下を伸ばした。 僕は例外で、彼女を見た瞬間、嫌な予感がした。 というのも、原因は僕の容姿と過去にある。 さっきも言ったように、僕は低身長。それだけならまだよかった。もうすぐ三十路だというのに、未だに中学生に間違われるほどの童顔で、声変わりも中途半端。友達のかわりに酒や煙草を買おうとすると、年齢確認すらされずに断られることもしばしば……。 まぁ、免許証見せれば買えるんだけど……。 この絶望的な低身長と童顔のせいなのか、僕はお姉様系の女性に襲われ続けている。
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