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大人になった佐野若菜は顔まで赤くして、体を強ばらせた。
けれど、恥ずかしそうに目を伏せたままぎこちない動きでゆっくりと立ち上がる。
僕は、新たなスタートをいつかのデジャブのように迎えた君に、この“挨拶”を贈ろう。
「大丈夫ですか?今回はクマが見えなくて残念です」
「……………………え」
顔を上げた君はみるみる目を丸くし、予想外にも頬を桜色に染めながら僕を真っ直ぐに見つめて柔らかく微笑んだ。
僕の心に描かれていたあの頃のあどけない間抜けな顔は、一瞬で透き通るように美しく愛おしい表情に描き替えられる。
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