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彼女の言葉に、息を飲んだ。
彼女は、可憐な天使でも、ドジで世間知らずなお嬢様でもなく、こんなにも頼りない容姿で人知れず闘ってきた“戦士”だったのだ。
僕があれこれ助言を考えるよりも早く、彼女は自分で心を整理して、前を向いてみせた。
なんて強いのだろう。
「佐野さんは、立派だな」
「いいえ、先輩のが立派です。私は頼まれたって生徒会長はやりたくありません」
「…なんだそれ」
少しずれた彼女らしい価値観に、僕は控えめに笑った。
「友達にも言ってないことを僕に話して良かったの?」
「先輩は…私に気を遣わないでしょう?初めて会った日から」
窓からは、沈み始めた太陽のオレンジ色の光が、柔らかく差し込んでくる。
それに照らされた未来を見つめる彼女の横顔は、皮肉にも僕が今まで見た中で1番天使のように美しかった。
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