3章

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「で、でもあれはケンちゃんがやろうって言ったんじゃん」 さえちゃん。この名前は僕達にとってタブーなのだ。 鈴本さえは1年前の春に都会から転校してきた少女だ。僕達のクラスに迎えられた彼女は、普通ではなかった。 僕達の思う普通とは、鬼ごっこや川遊びができることを指す。しかしさえちゃんは、そうではなかった。彼女は生まれつきの心臓病で走ることが出来なかった。そればかりか、体調が悪い日は学校にも来れず休みの日が続いた。 療養のために村へ来たはずなのに、夏休みに入ると同時に入院が決まった。先生は僕達5人にお見舞いに行くように言った。みんなで公園に集まって、アイスを片手に話し合いをした。 僕はさえちゃんが嫌いだったから、ほんの少しだけイタズラをするつもりだったのだ。
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