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「なに!」 「こいつが矢神!!お前が一昨日喧嘩した奴!」 「…あぁ!!」 ビシッと結城が王子を指差し、そこで漸く気付いた。 そうだ、こいつ。 俺がまっったく関係ないのに、何故か巻き込まれた元カップルの男! 「思い出してくれた?」 そんな俺たちの様子を見て王子改め矢神はにこりと微笑む。―それはもう、嫌味な程整った笑顔で。 (そりゃもう、笑みと同時に起こった女子の歓声がその凄さを表している。) 「で、その矢神クンが何か用でも?」 「そうそう!」 俺が思いっきり棘をさしたもの云いにも特に不快感を示すことなく、矢神がポン、と手をついた。 「あのあと、あの子とは無事に別れることが出来たよ」 「…何故それを俺に云う」 「あの子、今がチャンスだよ」 「……いや、俺別にあいつに興味ねぇし」 にこにこ、笑顔で話す裏には何があるのか。 俺の呆れたようなら言葉に「そっか」とだけ呟いて、矢神は、 「じゃあまたね」 と爽やかな5月の風の如く、俺のクラスを去っていったのだった。 目を瞬かせる俺らの近くで女子たちが黄色い声を上げていた。
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