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辺りに鳴り響くチャイムに、授業があることを思い出す。
ビニール袋にゴミを集めて、腰を上げた。
「矢神は戻らねぇの?」
「うん」
おいおい。この不良め。
半ば呆れながら、閉ざされた空間へと続く扉へと足を進めた。
「深山!」
大声で声を掛けられて、思わず振り向く。
さっきから姿勢を崩さないまま、けれども顔は俺の向けられて。
…何だよ、その顔。
「また、一緒に飯食っても善いかな?」
丸で幼子のようだ。
母親にすがりついて、顔色を窺って。
お前こそ、俺の中の印象がガラガラと音を立てて崩れていく。
「…善いよ、」
泣き出しそうな子供を置いて、俺はひたすら何かに泣きそうな程心を揺らしながら、静かに解放的な空間から抜け出したのだった。
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