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「で、どうするって?」
「え、あぁ。このプリントを纏めてー、」
問い掛けられた言葉にはっとして、2つあったホッチキスの一つを手渡す。
作業は簡単で、だけどややこしい。
10種類のプリントを1枚ずつまとめ、ホッチキスでとめて一人分にするというもの。
しかも×人数分だから大量に作らなくちゃいけないこと必須だ。
地味にプリントを纏めて、それからとめる。
しんとした部屋にプリントの擦れる音と、パチンとホッチキスの音が響いた。
「……」
「……」
そもそも、俺は会話が苦手だ。
向こうから話し掛けられると返すことが出来るけど、正直、余り話したことのない人と二人きりは、辛い。
いつも俺の回りの人が居るのだって、俺というより結城や千がいるからだし。
だから、会話がないこの空間は、辛い、というより、居づらい。
じりじりと身が焼けるような気さえしてくる。
「…そういや、深山ってさ」
「っ、なに?」
頭の中をぐるぐるさせていると、不意に矢神の視線がこちらに向けられた。
びくりと肩を震わせて、そちらを見れば、ほのかに微笑んでる。
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