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「矢神さーあんな顔似合わねぇよ」 「は?」 「誰かにを小馬鹿にしたような、睨むようなカオ」 そう云って、にやりと笑う。 「折角綺麗な顔持ってんのに、勿体ないじゃん」 俺の言葉にぽかんとアホ面してた矢神の顔がみるみるうちに硬直していく。 馬鹿じゃないの、と小さく呟いたのは明らかな照れ隠しだろう。 いつも余裕だった表情が崩れたその瞬間がすっげー面白くて、無理矢理顔を覗き込もうとするけど、悲しきかな、身長差がありすぎて見ることができない。 「もーさっさと鶴先生にこれ渡して帰るよ!」 「はいはい」 そう云って矢張スタスタと先を急ぐ矢神に慌てて付いて行く。 顔のことなんか、誉められ慣れてるだろうに、矢神の反応はすごく新鮮だった。 他人の顔なんて羨むものではないと思うけど、色んな表情を持つ矢神がほんの少しだけ羨ましくて。 大きな背中を追いかけながら、心がざわめきだつのを感じた。
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