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「こんなの、深山と一緒に居なかったら気付かなかったよ」
それから俺に向き直って、飛びきりな笑顔を溢す。
そんな、聞いてるこっちが恥ずかしくなる台詞と共に。
俺はこうやって教室に残ってぼんやりするのが好きだったこともあって、夕焼けが珍しいことなんてない。
真っ赤に染まる空と水面は入学当初からみなれている光景だった。
それでも、そう云って、嬉しそうに笑う矢神を見ていると、心の奥底がほんのりと暖かくなる。
自分が見て感じる世界を、誰かと共有している喜び。
きっと、俺だけじゃなくて、矢神もそれを感じているのだろう。
釣られて微笑む俺に、矢神は俺の手を引いて校舎から飛び出し街へと飛び出した。
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