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バタバタした日々も過ぎ、3月になった。
無事に進級した俺は、春休のあいだ
出来るだけ塾のバイトに入るようにした。
とはいえ、受験が終わった為、割りと暇で
来年度の入塾テスト問題を作ったり、
合格率の計算をしたり、その他諸々…
塾の方針で、私立の中学受験をして合格すると
名前の横に、花を張り付けていく。
『政治家の選挙か!!』と、思わなくもないが
子供も、親も、喜んでるから文句は言えない。
その合格花を作ったのは、彼女(ミユ)だ。
赤いリボンを、器用に薔薇の形に仕上げてた
ジッと見てると、視線に気づき顔を上げて
「ん? 武田くんも、やってみる?(*^-^*)」
「いや、俺はいいや…f(^_^;」
「そう? 作り始めると面白いよ。」
「うん。楽しそうやもんな。」
「受験した子供が、みんな合格しますように♪
願掛けしながら作るんだよ。」
「そっか。みんな頑張ってたからな。」
「うん。ホンマに頑張ってた…」
悲しいかな、現実は 全員合格とはいかない。
落ちても、公立の中学校があるから、
多少 無理を承知で受験する子供もいるし、
緊張のあまり、実力を出せなかった子供も…
初めての挫折に、子供よりも
親の方が 心折れてしまう事は多い。
「ごめんなさい💧」と謝る子供に
落ち込む母親。怒りを隠しきれない父親。
「大丈夫よ。そうよ、大丈夫!
高校受験で取り返せばいいの。
わかった? 今度こそ頑張るのよ!!」
と、発表の日に それ言うのかよ💢
色んな人間模様を目にした。
口出ししたい事も、山程ある。
けど、俺は受験担当ではないが塾側の人間で…
「チカラが及ばず 申し訳ありませんでした」
唇を噛み締め、そう答えるしかないんだ。
ふと、廊下に目をやれば
彼女が ひざまずいて、受験で落ちた子供を
ギュッと抱きしめてた。
途端に、堰を切った様に泣き出す子供。
背中をポンポン撫でて、あやす。
泣くだけ泣いて、顔を上げた子供の顔は
少しだけスッキリして見えた…
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