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 僕は右手に怪我をしていた。正確に言うと、昨日のバスケの試合でジャンプしたその瞬間に、相手チームの肩からのタックルを受けた時に、骨折をした。だから僕の右腕は包帯でぐるぐる巻きだし、なにやらたいそうな石膏と呼ばれる装備によって頑丈に守られている。  僕はその石膏が鎧のように思えてならなかった。中世の騎士であればきっとこのような石膏よりも素晴らしく頑丈な装備に身をつつみ、ちょっとやそっとの打撃なんかではけして怪我なんてしなかったに違いない。  そもそもバスケの試合に最初からこの石膏をまとって出場すれば良かったじゃないか。いやいやそんな事をしたらドリブルもできないし、パス回しもできない。いけないいけない。  重行は学校を休んだその日の日常を退屈に過ごそうとしていた。空には高い雲が流れる。中学2年生になって、あまり良いことが無かったが、あの高い雲に出会えた事がとても幸せに感じられた。  遠くから投げられた白いボールが、重行の所に飛んで来る。ここは公園。眼下には大きな水をたたえる川が流れる。河川敷である。そこは市民の憩いの場所になっていて、老若男女様々に詰め合わせて、日々の苦楽がねぎらわれていた。     
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