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ログハウス風の飼育小屋にかけられていた看板がモルモットのふれあい時間を明示している。
【ふれあいタイム 13じ00ふん から】
判っていはいるけれど、何度も読み取った文字。
「ヒロくん?」
「はいはい! あと5分!」
語気荒げに返す。
時間は相対的。アイには、待ち遠しく長い5分間。ヒロには、倍速に感じる5分間。
「ねえ、また入らないつもりなの?」
アイがハンチング・ベレー帽ごしに、不機嫌そうに言った。
「当然だろ」
「どうして入ってこないの?」
「だから、毎回言ってるだろ? 動物アレルギーだって」
「ウソ」
「何だよ、ウソって」
「毎回そう。それしか言わないよね」
「それしか、って言われても、仕方ないだろ。
じゃあ、どう言えっていうんだよ」
「別に。どうでもいいけど」
こうして議論になってない会話は、過去から何回も繰り返されループに陥ってきた。
「またアタシだけかー。でもいいんだ。かわいいモルちゃん、触れるから、寂しくないしー」
アイのつぶやきを嫌味として受け取ったヒロは黙って動物たちの様子を見ていた。
打ち込まれた杭を並べた檻の中で餌を食べながら出番を待つ、ヤギとヒツジたち。
ガラス張りの大きな部屋ではこれから登場するモルモットたちが
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