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1. 池ケ原公園
公園は今日も平和だった。
「今日のレースは何が来るんかねえ」
緑に塗られたベンチに座り、赤いサインペンを耳の裏にはさんでスポーツ新聞を片手に独りごとを言う老人。
ずっと、そんな感じなのだろう。公園のその椅子は、老人の指定席だった。
「区立池ヶ原公園」
公園のモニュメントでもある置き石にそう書かれていた。
そこは都心からは外れた区だが、都内にあるありふれた憩いの場だった。
公園の西側は子供たちの遊び場で、ブランコや鉄棒、砂場が設置されていた。
北の方に行けば、わずかばかりの健康器具的な遊具が置かれている。北の一角は、広い野球のグラウンドだった。
この公園を特徴づけているのが、東のエリア。南の入口から、中央の広場を抜けて右に曲がるとそこに看板が見えてくる。
ベニア板に手書きのカラフルな文字で「こども動物園 富士見平分園」と描かれていた。
同じ区内で少し離れた所にある本園とは違い、こちらはこじんまりとした規模の小動物だけを集めた、ふれあいの場所である。
それでも、幼い子供をもつ親にとっては午前中だけとか、子供を迎えた後などちょっとした時間を過ごせる貴重な場所になっていた。
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