オレの今と爺ちゃんの昔

1/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

オレの今と爺ちゃんの昔

学校から帰ると今日は運悪く爺ちゃんが居間でテレビを見ていた。爺ちゃんはオレを見つけると右手でチョイチョイと手招きして無言でオレを呼び付けた。別に無視してもいいのだが、それは二次、三次的な災害を安易に誘発させる事になり、オレをさらにブルーな気分にさせ、多少の痛みをもたらす事になり兼ねないので、最近は素直に爺ちゃんの言う事を聞くようにしているのだ。そして最近の爺ちゃんはオレを呼び寄せると決まって説教をしてくる。その内容はいつも大体同じで、始まりも決まっていてる。それは今日も例外では無かった。 『お前達は幸せ者だ。恵まれている。だからもっと“今”を噛み締めながら、もっと必死に、全力を出す事だ。たとえ後悔する事になったってもだな、お前達はには掛け替えのない“今”がしっかりと残されるからだ。オレ達の若い頃は今ほど科学技術も船も道具だってまだまだ乏しくて貴重だった。そして何より“人”が未熟だった。周囲の理解だって無かったし…』この位まで来ると退屈そうな顔で壁の隅の方を眺めているオレに気づいて、爺ちゃんはいつもこう締めくくってくる。     
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!