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第十八話 新しき住人たち
───廃村だった村に活気を感じる。
私は娘のイリサと共に、今だ朝日眩しい村の中を緩やかに歩いていた。
ヨーロッパの田舎のようなこの村はまさにのどかそのものだ。
一度深く呼吸をすれば肺には朝特有の、冷たさを持った新鮮な空気が
染み渡る、空気を美味しいと思える事の何と贅沢な事か。
肺に空気を取り込み歩く中、ある建築途中の建物へ近付くと。
「! アンラさん、おはようございますゴブ。
イリサ、おはようゴブ。」
「ああおはよう。」
「おはようタニア。」
建築作業を少し離れた場所で見守っていた緑色の小人が、
此方に気が付き、朝の挨拶をしに来てくれた。
彼女はゴブリンで、部族を纏める族長の娘。名前はタニアだ。
そのタニアの見た目はゴブリンの集落に居た頃とはかなり違う。
集落ではボロ布だけだった彼女は村にあったらしいTシャツを
丈合わせをして着ては、下には毛皮で作ったらしいスカートを履いている。
それと皮で出来た鞄を肩から提げ、頭には彼女の
トレードマークである花冠を今日も被っている。
そんなタニアの挨拶の声で私が居る事に気が付いたのか、建築作業を
していたゴブリン達が態々此方に挨拶をしに近寄って来た。
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