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私に朝の挨拶をしに来たゴブリン達は皆一様に、
『親方。おはやようございますゴブ。』等と私の事を親方と呼んでは
直ぐに作業へと戻って行く。
「皆さんもうすっかり、お父さんの事を親方呼びですね。」
お気に入りの黒色ケープを羽織ったイリサが、無邪気な
笑顔でそう呟いた。その呟きを聞いた
タニアが“うんうん”と頭を縦に振っている。
「そうだな……。」
言いながら私は辺りを見渡す。見渡す視界には、建築作業を
するゴブリン、農具を持って歩くゴブリン、弓の手入れをするゴブリン等。
実に様々なゴブリン達が村の拡張区を行き交っている。
行き交うゴブリン達を眺めながら、私はここ三ヶ月の
出来事を思い返す───
あの日。ゴブリン達の集落を去る日の事だ、
私は突如ゴブリン族の族長から『部族は貴方に仕えたい。』等と言われ、
族長のその申し出に私は何と答えるか深く悩む事に。
悩んで当然だ。それは余りにも無茶な話で、二~三人を仲間に
するのとは訳が違い過ぎる、だから私の答えは勿論“NO”だったさ。
しかしそう答えたとしても見渡した彼ら、決意の表情を浮かべた
彼らの姿が“YES”と言うまで追い縋る、そう見えたのだ。
私はどう穏便に、追い縋りも許さずに断ろうか、
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